主に航海士、通信士の担当する分野です。
- 航海の基本
- 地球のかたち
- 海図に使われる図法
- 船で使われる海里やノットって、どんな単位?
- 二つの速力、対水速力と対地速力
- 「おもかじ、いっぱい!」ってどういう意味?
- 海の交通ルール
- 航海灯ってなんですか?
- 基本的なルール (海上衝突予防法)
- 日本の海のルール (海上交通安全法)
- 航海計器
- レーダーとはどんなものですか?
- レーダーはどんなものでも映るのですか?
- 水深を測る方法は?
- 船の位置を求める
- 位置の求め方の種類
- 方位を利用する(交叉方位法)
- 距離を利用する (レーダ)
- 双曲線を利用する (ロラン)
- 灯台の光り方を教えて下さい。
- 船の構造、運動
- 船の寸法 - 船の寸法の測り方 -
- 喫水の読み方 - 船体の水中部分の深さ -
- 船の揺れ方
- 船の旋回
- 積んだ荷物の重さを測る
- 航路
- パナマ運河の構造、知ってる?
■ 航海の基本 : 地球のかたち
地球って球だと思いますか ?
............. 残念ながら、球ではありません。
赤道の半径は 6,378 [km] 、極の半径は 6,357 [km] で、赤道部分が極のよりも若干ふくらんだかたちをしています。
地球を縦に輪切りにしてできるかたちは楕円になります。
社会科の授業で、地球の半径は約 6,400 [km] と習ったと思います。
それで十分です。
赤道半径が若干長い、と覚えて頂ければいいと思います。
たった 20 km ですから無視しても差し支えない程度の値ですが、船の位置を正確に求めようとすると上記の値を考慮しなければなりません。
(注意) これらの値は文献によって異なることがあります。

■ 航海の基本 : 海図に使われる図法
いろいろな地図を見たことがあると思います。
皆さんの持っている地図帳のページをペラペラとめくってみれば、何種類かの地図を見つけることができるでしょう。
地球は球形をしています。
残念ながら、球を正確に平面に展開することはできません。
昔から、面積をなるべく正確に表したい、距離をなるべく正確に表したいなど、いろいろな目的に応じた地図(図法)が発明されてきました。
航海にもっとも大切なものは何か、これは「針路」です。
この針路を簡単に描くことができることが海図としての条件になります。
この目的にかなうのがメルカトール図法で、この図法は針路を直線で表すことができます。
図を見て下さい。地球上の 2点 A, B 間を航行します。このときの針路を c とします。
メルカトール図法を見て下さい。
緯度線及び経度線を直線で表すことができ、針路も直線になります。
針路を直線で記入できるので、針路を作図する際は三角定規などがあれば十分なのです。

■ 航海の基本 : 船で使われる海里やノットって、どんな単位?
□ 海里(マイル、mile)
海里は距離を表す単位です。
船では距離を表すのに、ほとんどの場合海里を使いメートルを使うことは極めてまれです。
1 海里とは緯度1分(ふん)を表す長さです。
船の位置を表すには緯度と経度を使用しますので、緯度1分という単位を使うと航海に非常に便利な訳です。南北に 60海里移動すると緯度1度移動したことになります。
このように、緯度に直ぐに結びつけられるため、非常に便利な値なのです。
それでは、1海里という単位を私たちが最も親しんでいる長さの単位メートルに直してみましょう。
赤道から極までは90度、5400(=90×60)分です。
また、この距離は 10,001,960 m(理科年表より)ですので、これを5400で割ってやれば、1海里(M)をメートル(m)で表すことができます。
計算してみると、次のようになります。
1 M = 10001960m / 5400 = 1852 m
ちょっと中途半端で覚えにくい値ですけれど、航海する上で最も重要な値の一つです。
余談ですが、メートルという単位について。
赤道から極までの距離を1/10,000,000(千万分の1)したものを 1 m としました。
赤道から極までの弧の距離(10,001,960m)を千万分の1すると、1 m になります。

■ 対水速力と対地速力
船の速力には対水速力(たいすいそくりょく)と対地速力(たいち...)というものがあります。
字の示すとおり、対水速力とは水に対する速力で、対地速力は陸地に対する速力です。
両者の速力を求めることによって、その海域の海流の流向と流速を知ることができます。
これらを、アニメーションを用いて説明しましょう。
1. 対水速力とは
対水速力とは船が海面上を進む速さをいいます。
プレイボタン(右向き三角形)を押して下さい。
船が動き出します。
ある一定時間に海面AB間を航走します。
船の状態や機関出力が一定で波の状態等が同一ならば、どのような海面に対しても対水速力は一定になります。
2. 対地速力とは
陸地に対する船の速力をいいます。
これは船の海域の海流の流れに左右されます。
したがって、機関出力を一定にしても対地速力が一定になるとはいえません。
以下のアニメーションの海流(青い帯)と陸上の標識の関係をよく見て下さい。
2.1 海流が流れていない場合
海流に流れがないため、対水速力も対地速力も同じになります。
この場合、「対地速力 = 対水速力」の関係が成り立ちます。
2.2 船の進路と海流の方向が一致している場合 (順流)
一定時間経過した後の船の位置はどうですか。
海流が船の進路と同一の方向に流れた分、船の航走距離が長くなっていますよね。
対水速力はどうでしょう。
変わっていませんよね!! この点がとても重要です。
船が速く走ったのは、機関出力を上げたからではなく、海流の恩恵を受けたからです。
この場合、「対地速力 = 対水速力 + 海流の流速」の関係が成り立ちます。
2.3 船の進路と海流の方向が反対の場合 (逆流)
一定時間経過した後の船の位置は? あれ、B地点までとどきませんでしたね。
海流が反対に流れた分、船の航走距離は短くなってしまいました。
ここでも対水速力は変わっていませんよ。
この場合、「対地速力 = 対水速力 - 海流の流速」の関係が成り立ちます。
お分かり頂けましたか。
海域ごとの海流をうまく利用して航行すれば、速力を上げることができ、目的地に早く着くことができますし、燃料も少なくてすみます。
■ 「おもかじ、いっぱい!」ってどういう意味?
「おもかじ(面舵)、いっぱい!」テレビ等でよく聞く船の用語の一つですね。
これは、操船のときのオーダーの1つで『舵を右に一杯にきりなさい』という意味です。
一杯というのは、通常最大舵角の約35度まで舵をきることです。
逆に左に曲がりたいときは、面舵にたいして“取舵(とりかじ)”というようになります。
この呼び方は、十二支に由来しています。船首方向を12時の子(ね・ネズミ)として時計方向に十二支を配置すれば、右側の3時方向は卯(う、ウサギ)、左側の9時方向は酉(とり)になります。
そこで右側を卯面(うも)と呼び、左側を酉(とり)と呼ぶようになりました。
そのことより、卯面(右)に舵をきることを“面舵”(おもかじ)、酉(左)に舵をきることを“取舵”(とりかじ)になりました。
しかし、現在の一般商船では、多国籍にわたる外国人船員が乗船し、あらゆる国に寄港することから、国際的な取り決めによって定めた、統一された英語でのオーダーを使用しています。
この英語のオーダーでは、面舵は“Starboard(スターボード)”、取舵は“Port(ポート)”といいますので、『面舵いっぱい』は、“Hard a starboard(ハード・ア・スターボード)”となります。
なお現在でも、日本人だけで運航される海上自衛隊では日本語のオーダーを採用しています。
英語で、スターボード、ポートと呼ぶのにも理由があります。
昔バイキングが活躍していた頃の船は、舵取り板が右側についていました。
そのため、この舵を岸壁にぶつけて壊さないために左側を港の岸壁に着けていました。
このことより、船の左側は荷役するための側という意味のLad board(ラドボード)と呼ばれ、訛って“ラーボート”と呼ばれるようになりました。
また、右側は舵板のある側を意味するSteering board(スティアボード)と呼ばれるようになり、これが転じ“スターボード”になりました。
このように左側をラーボート、右側をスターボードと言っていましたが、似たような音のため聞き間違いによる事故まで起きてしまいました。
そこで聞き間違いを避けるために、左側を港である“ポート”に言い換え、右側をそのまま“スターボード”というようになりました。
現在では、上で述べたように右に転じたい時にStarboard(スターボード)、左に転じたいときにPort(ポート)というようにしています。
通常は、スターボード(ポート)の後に、舵の角度を加え舵の角度を指示し、その時々にあった曲がるスピードにしていきます。
(例: スターボード10! → 右に舵を10度きりなさい)
■ 航海灯ってなんですか。
夜間や視界の悪いときに、他船に自分の船の航行している向きを知らせるための燈火を航海灯といいます。
他船に自船の行動を知らせる大切な燈火です。
あらゆる船舶は世界共通の海上交通ルール(海上衝突予防法)に従って、これらの燈火を付けなければなりません。
航海灯の種類やその数は船の長さによって決められています。
非常に種類が多いので、ここでは全長が50m以上の船舶を例にとって説明します。
下図を見て下さい。
5個の航海灯があるのが判ると思います。
船の船首方向から(図の右から)、前部マスト灯、右舷灯・左舷灯、後部マスト灯、船尾灯です。
マスト灯と船尾灯は白色で、右舷灯は緑、左舷灯が紅です。
各燈火の色の範囲は照らしている範囲を示しています。

航海灯の仕様をもう少し詳しく見てみましょう。
照らす範囲がちょっと覚えにくいですけれど、後は簡単だと思います。
| 航海灯の種類 | 数 | 色 | 照らす範囲 | 視認距離 |
|---|---|---|---|---|
| マスト灯 | 2 | 白 | 船体中心線から左右にそれぞれ112.5度 | 6海里 |
| 右舷灯 | 1 | 緑 | 船体中心線から右に112.5度 | 3海里 |
| 左舷灯 | 1 | 紅 | 船体中心線から左に112.5度 | 3海里 |
| 船尾灯 | 1 | 白 | 船体中心線から船尾方向にそれぞれ67.5度 | 3海里 |
航海士はこれらの燈火を見て、その船がどのような大きさの船で、どちらの方向に航行しているのかを判断します。
■ 基本的なルール (海上衝突予防法)
海上交通ルールが陸上のそれと最も異なることは、海上交通ルールは世界共通であるということです。
世界各国が独自に海上交通ルールを決めたのでは、統一性が取れず、きわめて危険です。
世界中の船が守るべき海上交通ルールを「海上衝突予防法」といいます。
2 隻の船が「衝突しそうだ」と判断されるとき、それぞれの船が取らなければならない行動を規定しています。
2隻の船が衝突しそうもないときは、それぞれの船は何の行動も起こす必要はありません。
そのままの針路で進んで構いません。
どうしてかって、広い大洋の真ん中で米粒程度にしか見えないほど遠くを航行している船に対してルールを定めても、余り実際的ではありませんからね。
避け方ですが、海上交通は「右側航行」が原則なので、その原則に合うように相手船を避けます。
東京湾や大阪湾などの非常に混雑した海には、更にいろいろな交通ルールがあって船が衝突するような状況にならないように工夫されています。
言葉で説明すると何のことやら良く分からないので、実例を挙げて説明して行きましょう。
□ 行き会い船のルール (行き会い船の航法)
真ん前からこちらに真っ直ぐに航行してくる船同士の関係を「行会いの関係」といいます。
下のアニメーションに示すように、そのまま避航せずに航行すると×印のところで衝突してしまうのが分かると思います。
行会いの関係になった場合には、両方の船に避航義務があります。
次のアニメーションを見てください。
この2船はお互いに針路を右に転じて避航します。
どうです、避航できたでしょ。これを「行会い船の航法」といいます。
□ 横切り船のルール (横切り船の航法)
2隻の船が針路を交差していて衝突しそうな場合を、横切り関係といいます。
下のアニメーションに示すように、そのまま避航せずに航行すると×印のところで衝突してしまうのが分かると思います。
横切り関係になった場合は、「他船を右に見る船」に避航義務があります。
次のアニメーションを見てください。
他船を右に見る船(アニメーション中、黒い船)はそうでない船(同、白い船)を針路を右に転じて避航します。
ここで他船を右に見ない船(白い船)は針路速力を保持して航行しなければなりません。
どうです、避航できたでしょ。
これを「横切り船の航法」といい、他船を右に見て他船を避航する船を「避航船」、そうでない船を「針路速力保持船」と呼びます。
□ 追い越し船のルール (追い越し船の航法)
ある船が他の船を追い越そうとして衝突しそうな場合を、追い越し関係といいます。
下のアニメーションに示すように、そのまま避航せずに航行すると×印のところで衝突してしまうのが分かると思います。
追い越し関係になった場合は、「追い越し船」に避航義務があります。
次のアニメーションを見てください。
他船を追い越そうとする船(アニメーション中、黒い船)は追い越そうとしている船(同、白い船)の進路を妨げないように、避航します。
この場合、追い越される船は針路速力を保持して航行しなければなりません。
どうです、避航できたでしょ。
これを「追い越し船の航法」いいます。
でも、海上衝突予防法なんて随分変な名称だと思いませんか。
陸上では道路衝突予防法なんていいませんよね。
■ 海の交通ルール : 日本の海のルール (海上交通安全法)
全世界の海に共通したルールは海上衝突予防法です。
すべての船舶が守らなければならない海上交通の基本です。
しかし、日本の海は船舶交通量が非常に多いので、海上衝突予防法だけでは日本の海の交通整理には限界があります。
もう少しきめの細かい規則が必要です。
日本の海の交通ルールを定めた法律を海上交通安全法といいます。
船舶交通が多く、混雑する海域 (東京湾、伊勢湾、瀬戸内海) の航法が決められています。
それぞれの湾の特に船舶交通の要所には航路が定められており、ある一定以上の大きさの船舶はこの航路を航行し目的地まで行かなければなりません。
海上交通安全法に定める航路を以下に示します。
日本の船舶交通の要所である瀬戸内海には非常に多くの航路があるのがお分かりいただけると思います。
○東京湾にある航路
浦賀水道航路
中ノ瀬航路
○伊勢湾にある航路
伊良湖 (いらご) 水道航路
○瀬戸内海にある航路
明石海峡航路
備讃瀬戸東航路
宇高 (うこう) 東航路
宇高西航路
備讃瀬戸北航路
備讃瀬戸南航路
水島航路
来島海峡航路

■ レーダーとはどんなものですか。
雨や霧あるいは夜の航海中、船の周りが何も見えないときでも周りの陸地や船を見ることのできる装置です。
自船の周囲に電波を発射し、陸地や他船からはね返ってきた電波を特殊な装置でテレビのような画像にします。
右の図はレーダがとらえた画像です。
この画像は、画面の上が陸地、下が海という海域で撮影されたものです。
中央より少し上の横方向に連なる線は海岸線です。
海岸線から上側は何も映っていませんね。
本当は陸地があるのですが、電波の反射がないので何も映っていないのです。
左下に写っているのは船です。
鋼鉄でできている船ははっきり映ります。
中央にあるギザギザした円の画像は海面反射です。
近くの波から反射した電波が写っているのです。
波が高いとこのように映ります。
穏やかな海面であれば海面の反射はほとんどありません。
この映像を撮った日は、風が強く波が高かったことが想像できます。
■ レーダーは海の上のものなら何でも映るのですか。
どのくらい遠くのものまで見えるのですか。
いくら高性能のレーダーを使っても、総てのものを映し出すことは不可能です。
小さいボートやヨットなどは映りにくいです。
よく映るように小さな船には、レーダーの電波をよく反射する反射板をつけることもあります。
さて、どのくらい遠くのものまで映るのでしょうか。
大きな山などは、200Kmくらい離れていてもみえることがあります。
レーダーのアンテナの高さが高いほど、物標(ぶっぴょう)の高さが高いほどよく映ります。
地球の湾曲の陰になってしまうと映りません。
下図に示すように、船のレーダにA島は映りますが、B島は映りません。

■ 水深を測る方法は?
船舶にとって、海の深さがどのくらいあるか計測することは非常に大切なことです。
これを間違えると、乗り上げ事故などの大事故を引き起こしてしまうからです。
それでは、水深をどのように測ればいいのでしょうか。
もっとも簡単なのは、ロープの先に重しを付けて海底までの距離を測る方法です。
しかし、この方法では水深が深くなったり、船が走っていたり潮流などの流れがあると、うまく測れません。
広く使われているのは音を利用して水深を測る方法で、その機械を音響測深機といいます。
原理は船底から音を発し、その音が海底から反射してくる時間を計測して、水深を求めます。 (下図参照)
これですと、多少深い海でも、船か走っているときにも水深を測ることができます。
音は水中では1秒間に1,500 [m] 進みます。
発射した音が 0.5 秒後に戻ってきたとすると、水深 h [m]は
h [m] = 1500 [m/s] * 0.5 [s] / 2
= 375 [m]
となります。(0.5秒とは音波は往復している時間なので、水深はその半分です。よって、2で割っています。)
また、音響測深機で求めた水深は音響測深機の発信器が取り付けられている船底からの水深なのです。
したがって、船の喫水(船の水中の部分の深さ)を修正する必要があります。
船の喫水を5mとすると、実際の水深 H は
H [m] = 375 + 5 = 380 [m]
となります。
■ 船の位置を求める : その種類
船舶を目的地まで正確に運航するには正確な船の位置(船位(せんい)といいます。)を求める必要があります。
陸上では道路標識や顕著な建物(有名なビル、交差点にあるお店、などなど)を見て自分のいる位置を比較的簡単に知ることができますが、海上ではそう簡単ではありません。
航海士は船位を求めるという技術を習得しておく必要があります。
船位を求める方法は、その有効範囲で分類すると次のようになります。
交叉(こうさ)方位法という船位を求める方法を例に取ると、それは陸岸から20マイル程度まで有効であることを示しています。

皆さんはGPSというのをご存じでしょう。
カーナビでとても身近になりました。
最近は携帯電話にも搭載されています。
一昔前まで航海士は一生懸命勉強して、船位を求める方法を習得しましたけれど、最近はGPSで誰でも簡単に船位を求めることができます。
時代はずいぶんと進んでしまいました。
■ 船の位置を求める : 交叉方位法
コンパスを用いて物標の方位を測り、それを海図上に作図することによって船位を求めます。
交叉方位法は陸上物標を使用するため、それらが見える必要があり、陸地から20マイル(37km)程度までがその有効範囲です。
この方法は、沿岸を航海するときに非常に有効です。
下の写真はコンパスで物標の方位を計測し、その方位を海図上に作図しているところです。

海図上には次のように作図されます。
作図に使う道具は、三角定規です。
それぞれの灯台の方位を示す線を記入し、その交点を船位とします。
○は船位を「ここに決めましたよ」という印です。
数字は船位を求めた時刻(例では、10時00分) です。

■ 船の位置を求める : 距離を利用する (レーダ)
レーダーを用いて物標までの距離を測り、それを海図上で作図することによって船位を求めます。
レーダーを利用するため、有視界で実施する交叉方位法よりも有効範囲は広く、陸地から40マイル程度まで利用可能です。
また、視界が悪い条件でも計測することができるため、非常に有効な方法です。
下の図はレーダの画面を模擬したものです。
十字カーソルをドラッグして陸地までの距離と方位を計測して下さい。
ドラッグを終了した位置の方位と距離が右下に表示されます。
距離はの単位はマイル(1 mile = 1,852 m)です。
方位は北(画面上)を 0 度として、時計回りに 360度方式です。
このレーダ画面は24マイルまで計測できるように設定してあります。
■ 船の位置を求める : 双曲線を利用する (ロラン)
双曲線を利用して船位を求めるロラン(LORAN)A方式をご紹介します。
「 2点からの距離の差が一定の曲線は双曲線である。」というという原理を利用します。
ロラン方式は、ロラン局と専用の受信機を利用した位置を求めるための専用の方式です。
レーダのような多目的(船位を求めるたり、他の船の存在を探知するなど)に利用できる航海計器を利用して位置を求める方式とは異なります。
ロランA方式をアニメーションで説明します。
1. ロラン局という一対の電波局(A- B局)を使います。
2. 主局Aは電波(黒)を発射します。その電波は船と従局B局に届きます。
3. 従局BはA局が発した電波を受けた後、一定の時間をおいてから電波(赤)を発射します。
4. 船は主局Aからの電波(黒)と従局Bからの電波(赤)を受信します。
その時間差をTとします。
時間差Tは次のようになります。
T = {(A局から発した電波がB局に届く時間)
+ (B局が電波の発射を故意に遅らせる時間)
+ (B局から発した電波が船に届く時間)}
- (A局から発した電波が船に届く時間) [sec]
ここで、 (B局が電波の発射を故意に遅らせる時間)とは、船舶がA局とB局の電波を区別できるように故意に設ける時間です。
5. (A局から発した電波がB局に届く時間)と(B局が電波の発射を故意に遅らせる時間)は既に決まっている値なので、受信機の中で消去します。
主局Aと従局Bからの電波の到来時間差はLORAN受信機上に時間差 t として表されます。
6. その時間差 t に 300,000,000[m]を掛ければ、船のいる位置のA局からの距離とB局からの距離差 d を求めることができます。
d = 300,000,000 × t [m]
A局及びB局からの距離差が一定の曲線は双曲線となります。
この双曲線を利用して位置を入れるには、その双曲線が描き込まれたロラン海図という専用の海図を利用します。
1. A-B両局から距離差一定の双曲線を探します。(図では赤の太線)
2. 赤の太線だけでは位置を特定することができないので、一対のロラン局A-Cを利用し同じように計測します。
3. A-C両局から距離差一定の双曲線を探します。(図では青の太線)
4. 赤の太線と青の太線の交点を船位とします。

長々とした説明にお付き合い頂きありがとうございました。
ロラン方式とは「一対のロラン局からの距離差を求め、それを利用して船位を求める」、ということが分かって頂ければいいと思います。
ただ、このロランA方式というのは既に過去のものとなり、今はさらに進化したロランC方式がそれに取って代わりました。
■ 灯台の光り方を教えて下さい。
灯台は航海に欠かせない大切な航路標識(航行するための目印)です。昼間は寡黙に直立する灯台ですが、夜になると個性的な光りを発しその存在を強調します。
航海士はその光り方(灯質、とうしつ)を覚え、灯台を識別できるようにしておく必要があります。
灯台の灯質の要素には、光の色、周期、光り方があります。
□ 光の色 : 灯台が発する光の色をいいます。 白、赤、緑が使われます。
□ 周期 : 一定の光り方が継続する時間をいいます。 5秒程度のものから、30秒程度のものまであります。
□ 光り方 : これにはいろいろな種類があり多少複雑なので、アニメーションを使用して説明します。図の下に書いてあるのは、光り方の略号です。
○ 不動光 (Fixed) : 消灯が無く、ずーと光っているものをいいます。
右の例は「白の不動光(Fixed White : F W)」という光り方です。
○ 閃光 (Flashing) : 一定間隔で閃光を発する光り方です。
1. 単閃光(Single Flashing)
一定間隔で1回の閃光を発する光り方です。
右の例は「6秒間に白い閃光が1回 (Flashing White 6 sec)」という光り方です。
2. 群閃光 (Group Flashing)
一定間隔で数回の閃光を発する光り方です。
右の例は「6秒間に白い閃光が2回(Group Flashing 2 White 6sec)」という光り方です。
○ 明暗光 (Occulting) : 一定の光度を持つ光を一定の間隔で発するもで、点灯している時間が消灯している時間よりも長い、という光り方です(???何のことかわからない!) 。
言葉で説明すると難しいので、例を見て理解してください。
1. 単明暗光 (Single Occulting)
一定の光度を持つ光を一定の間隔で発するもで、点灯している間が消灯している間よりも「長い」光り方です。
右の例は「6秒間に、4秒間点灯し、2秒間点灯(Occulting White 6sec)」しています。
点灯している時間が消灯している時間よりも長いことが判りますよね。
2. 等明暗光 (Isophase) 上記の単明暗光の一種で、点灯している時間と消灯している時間が「等しい」ものを等明暗光といいます。 右の例は「6秒間に、3秒間点灯し、3秒間消灯 (Isophase White 6sec)」で、点灯している時間と消灯している時間が等しくなってます。 上の例と比べて下さい。
○ 互光 (Alternating) : 異色の光りを交互に発するものをいいます。
1. 単閃互光 (Alternating Flashing)
一定間隔で色の異なる閃光を交互に発する光り方です。
右の例は「6秒間に緑と紅の閃光が交互 (Alternating Flashing Green Red 6sec)」という光り方です。
2. 不動互光 (Fixed Alternating)
一定間隔で色の異なる閃光を交互に発する光り方です。
この光り方は消灯している時間はありません。
右の例は「6秒間に白と紅の不動光が交互 (Fixed Alternating White Red 6sec)」という光り方です。
■ 船の構造 : 船の寸法
皆さん学年の初めに身体測定をしますよね。
どのくらい身長が伸びたとか、体重がどのくらい増えたとか、ちょっとどきどきで楽しみですよね。
身体測定では、身長、体重、座高、胸囲などを測定すると思います。
これらの部位の値を測るのは、これらの値が人の大きさを端的に表すことができるからです。
船にも同様にその大きさを端的に表すための寸法があります。
これらを主要寸法といい、船の長さ、幅、深さがそれにあたります。

□ 長さ Lpp
いろいろな長さがあるのですが、主要寸法として使用するのは垂線間長(すいせんかんちょう)という長さです。
計画満載喫水線(荷物を一杯に積んだときの喫水線)が船首と交叉する点から舵柱(舵を支える柱) の中心までの長さです。
ちょっと難しいですけど、下の拡大図で確認して下さい。

□ 幅 B
船体の最も幅の広い部分における幅の長さです。
□ 深さ D
船の長さの中央において、船底から上甲板までの垂直距離をいいます。
深さといっても、喫水とは異なりますので注意して下さい。
■ 船の構造 : 船の喫水の読み方
船体の水中に入っている部分の深さを喫水といいます。
この喫水によって船体に関するいろいろなことを知ることができます。
1. 喫水が浅ければ、浅い海域を航行できます。つまり、航行できる海域を知ることができます。
2. 荷物を積み降ろしすると船の喫水が変化します。つまり、積み降ろしした荷物の量を知ることができます。
3. 船の安定性を知ることができます。
このように、喫水を正確に知ることは非常に大切なことなのです。
船体には船首・船首尾中央・船尾の左右舷に喫水標が刻印されています(下図の矢印の位置)。

喫水標の一部を拡大したものを見てください。
1m 毎に1M, ..., 6M,7M, ... が、20cm 毎に 2, 4, 6, 8 が記入されています。
それぞれの文字の高さは 10cm で、文字の太さは 2cm です。文字間の高さは 10cm です。
A, B, C の位置に水線があったとすると、それぞれの喫水は
A : 6 m 00 cm
B : 6 m 10 cm
C : 6 m 55 cm
となります。 分かりますよね。

実際には海面はじっとしていてくれないので、喫水の計測には随分と苦労します。
右図の喫水読めますか。
三等航海士としての最初の仕事は、この喫水を計測するという仕事です。
とても大切な仕事です。
■ 船の揺れ方
船は揺れるからいやだ、などといわれます。
では、一体どのような揺れ方をしているのか、ちょっと勉強してみましょう。
1. 横揺れ(ローリング, rolling)
まずは代表的な揺れ方、横揺れです。
船体が左右に揺れることをいいます。
船の揺れというとこれを思い出すんじゃないですか。
この揺れでは余り酔いません。
ただ、部屋をきちんと整理しておかないと、物が散乱してしまいます。
2. 縦揺れ(ピッチング、pitching)
次に代表的なのが、縦揺れです。
この揺れはエレベータが上下するように感じる揺れであるため、これが激しくなると、とたんに酔います。
3. ヨーイング(Yawing)
船首を左右に振るヨーイング(Yawing)という揺れがあります。
これが始まると舵を取るのが難しくなります。
こんな揺れでもちゃんと舵を取れれば、あなたは名操舵手。
以下3つの揺れは余りご存じないかもしれません。
これらは上記3つの揺れほど顕著ではありません。
4. 上下動(ヒービング、Heaving)
船体が上下に揺れる揺れを、上下動(ヒービング、Heaving)といいます。
5. 左右動(スウェイング、swaying)
船体が左右に揺れる揺れを、左右動(スウェイ、sway)といいます。
6.前後動(サージング、surging)
船体が前後に揺れる揺れを、前後動といいます。
どうですか。
船体はいろいろな揺れ方をしているものでしょ。
実船ではこれらが複合した複雑な揺れになります。
■ 船の旋回
船は巨大であるがゆえに、とても大きな円を描いて旋回します。
船を一回転させるにはとても広い海域が必要になります。
実際にどのくらいの旋回をするのか図で見てみましょう。
この図は船が右旋回するアニメーションです。
船をクリックすると、船が旋回します。
1. 一定の速力で航走し、原点Oの地点で舵を右35度に取ります。
2. しばらくの間は直進しますが、次第に船体は右に旋回を始めます。次第に速力が落ち、船体は左舷(旋回の外側)に傾斜します。
3. 地点Aに達する頃に速力や船体傾斜は一定になり、定常旋回が始まります。
4. 船首は旋回軌跡の内側を向き、船尾は軌跡の外側に出ます。
5. 図には示した格子の1区画は船体の長さ(L)に合わせてあります。これから、船の旋回径は船の5倍 (5L) 程度であることが分かります。つまり、長さ200mの船では旋回型は約1000mにもなります。
6. 船が原点Oから一回転して地点Bに達するのに、5分以上の時間を要します。
船は一回転するのに5分もかかり、旋回径は船の長さの5倍にもなります。
船って随分と操縦性能が悪いものですね。
■ 積んだ荷物の重さを測る
積んだ荷物の重さを測るにはどうしたらいいでしょうか。
最初から重さがわかっている荷物ならば問題ないのですが、わからない場合もたくさんあります。
荷物の重さ = 荷物を積んだ後の船の重さ - 荷物を積む前の船の重さ
1. 荷物を積む前の船の重さを求める。
船には喫水標という船体が水中に入っている部分の深さを測る目盛りがついています。
これを測って船の重さを出します。
排水量表と呼ばれる表から、荷物積む前の喫水値 d1 に見合う排水量(船体が押しのけている水の量) D1 を求めます。
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2. 荷物を積んだ後の船の重さを求める。
荷物を積んだ後、喫水値 d2 に見合う排水量 D2 を求めます。
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3. 積んだ荷物の重さ W を計算する。
上記排水量の差が荷物を積んだために生じた排水量増加量 D です。
D = D2 - D1
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ということは、
W = D
さあ、これで荷物の重さがわかった!!
... いや、ちょっと待って。
この船が湖に浮いている船ならばこれでいいのですが、海に浮いているとしたら、もうちょっと計算が必要です。
海水の比重を考慮しなければなりません。
W = D × 海水の比重(約1.025)
これが正解です。
■ パナマ運河の構造、知ってる?
パナマ運河は太平洋と大西洋を結ぶ、全長約80kmの、とても大切な運河です。
この運河はちょっと変わっていて、船を通すのに水のエレベータ(閘門(こうもん)、lock)を使います。
船はこの閘門によって約25m持ち上げられ運河の中央にあるガツン湖に達し、その反対側にある閘門で25m下げられ、それぞれの大洋に出ていきます。
閘門は全部で3箇所あります。
太平洋側から、ミラフローレス閘門(Miraflores Locks)、ペドロミゲル閘門(Pedro Miguel Lock)、ガツン湖(Gatun Lake)を越えて、大西洋側にガツン閘門(Gatun Locks)です。
ミラフローレス閘門は2段式で船を約16m上昇(または、下降)させます。
ペドロミゲル閘門は1段式で船を約9m上昇(または、下降)させます。
ガツン閘門は3段式で約25m上昇(または、下降)させます。
パナマは雨が多く、ガツン湖の水量が豊富なため、このような施設を造ることができたのです。
下のアニメーションは太平洋側から大西洋側へ通航するときの様子を表しています。
各閘門と船の動きを理解してください。











